出版倫理と日本語の公正な論文発表のための仕組みを考えるセミナー レポート
2015年2月4日に東京大学にて、iParadigms LLC/iGroup(Asia Pacific)主催、日本医学雑誌編集者会議、日本疫学会、杏林舍が協力という形でセミナーを開催しました。1月に開催したセミナー同様、「出版倫理」がテーマですが、今回は、より日本語論文に重きを置いた内容となりました。講演者にはCOPE (Committee on Publication Ethics) の委員長Virginia Barbour氏やJAMJE(日本医学雑誌編集者会議)議長の北村聖教授を招き、約60名の方にお集まりいただきました。
日時:2015年2月4日 13:30~17:00
会場:東京大学医学部2号館本館1F 小講堂
参加費:無料 事前登録制
プログラム
出版と研究倫理:無視できない密接な関係
Virginia Barbour氏(COPE委員長)
出版と研究倫理については、確固とした定義付けは難しいこと、また、研究と出版のプロセスは多様であること、そして、研究や出版における問題には大小様々なものがあることが説明されました。あるアンケート結果では、14%が、他人が不正を行っていることに気付いていたと回答し、2%は自分が行ったことを認めているという結果が出ており、不正は決して珍しいことではありません。しかし、めったに見つかることはない。それは、編集者が自分のジャーナルに限っては起こらないと思い込んでいるからとの指摘がありました。
そこで、不正は起こるものであるという事実、その解決には時間、お金、マンパワー、考え方の変革が必要であるということをまずは認めなくてはならないと主張されました。そして不正に立ち向かう戦略として、以下の3つを挙げ、詳しく説明されました。
- 早い段階での検知
- COPEなどを通じた教育とサポート
- 背景にある文化など、不正の根本的な原因を正す
医学研究成果公表における著者資格と研究不正およびその防止
北村聖教授(JAMJE議長)
不正論文の実例を広く分かりやすくご紹介いただき、著者資格についての現在の考え方、“バンクーバースタイル”の変遷等について語っていただいた上で、不正論文をなくすためにどうしたらよいのか、一緒に考えましょうと呼び掛けられました。
わが国におけるOAプラットフォームと出版倫理(J-STAGEの観点から)
杉本樹信氏(JST)
オープンアクセスの浸透にともなって論文情報が流通する現在、出版・研究倫理に関する対応策が不可欠であることが語られた後、JSTにおける出版・研究倫理に関する調査研究実績とCrossCheckの利用状況等が紹介されました。
日本疫学会誌における出版倫理に関する取組み
橋本勝美氏(日本疫学会)
ジャーナル編集時の出版倫理に関する問題には、オーサーシップ、剽窃・盗用、重複出版、利益相反、倫理的配慮等があり、問題の発生を防ぐには、ジャーナルポリシーの用意、投稿時のチェックリストやフォームの提出、CrossCheckなどのツール、出版倫理教育等があること、そして、不正が疑われたらCOPEのフローチャートに従って対応する等、編集担当者の視点から、具体的に語っていただきました。
ScholarOne Manuscriptsでの不正論文チェック
鳥海英夫(杏林舍)
S1Mの概要、S1Mにおいて不正を防止するために役立つe-form、CrossCheck、ORCID等のオプション機能について説明いたしました。CrossCheckについては、サンプル画面を用いて、具体的に利用方法をご紹介いたしました。
学術出版社の剽窃チェックのためのアイディア-日本語版CrossCheck構築のお願い
笠間和喜氏(iGroup Japan)
撤回論文や不正の内容についての分析結果、実際に起こった事案とその影響に関する検討等が発表されました。また、有効な対応策としてのCrossCheckの仕組みを紹介し、現在は日本語には対応していないCrossCheckの日本語版構築のために、学協会様に協力を呼びかけました。
↓S1MNEWS No.06↓ でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
主な記事
■ 出版倫理セミナー開催レポート
■ CrossCheck / iThenticateデータベース
■ 第5回S1M ワークショップを終えて