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あんずジャーナル

2024年1月1日 お知らせ

Web of Scienceの収載誌見直しについて

昨年3月、Clarivate Analyticsは50誌以上をWeb of Science(WoS)から除外し、ジャーナル・インパクトファクター(JIF)をはく奪しました。WoS収載誌の見直しは定期的に行われていますが、この規模の削除は過去に例を見ないほど大きなものでした。

この見直しでは独自開発のAIツールによって500誌以上が収載基準を満たさないとしてリストアップされ、その中から削除対象が選ばれたようです。
削除対象の中にはScopusやPMCといった名だたるデータベースに収載されているジャーナルもありましたし、International Journal of Environmental Research and Public Healthという雑誌に至っては前年のJIFが4.614と分野でも平均以上に引用数の多いものでした。

今回大規模な見直しが行われた背景は2つあると考えています。一つは急成長を遂げているオープンアクセス誌(OA誌)の活動がJIFを実態以上に引き上げるよう働いているとみなされたことです。例えばMDPIというOA誌専門出版社は2010年に創業して以来、急成長を遂げていますが、ゲストエディターを大勢招くことによる頻繁な特集号発行が強力な推進力だと言われています。(中には1日に4つの特集号を発行したジャーナルもあるとか・・・)
今回のWoSからの除外にあたってMDPIとしても大量の特集号を出版するスタイルが問題視されたと認識しているようです。

もう一つはAIツールの登場によるチェック効率の飛躍的向上が考えられます。これまでも見直しによりWoSから除外されるジャーナルがある一方で、最新の国際的基準へのアップデートが遅れているジャーナルも収載され続けています。推測ではありますが、Clarivate Analytics側で問題は認識しつつも除外するほどではないと見なされていたジャーナルもあれば、リソースの関係で不備が見逃されていたジャーナルもあると考えられます。AIツールの登場によりチェックが効率化したことで、今後はこれまでは見逃されていた不備が見つかり、削除対象としてリストアップされる可能性が高まると推測されます。

WoSに収載されるには厳格な審査をクリアしなければならず、品質基準を満たしているジャーナルは全体の15%以下といわれています。しかしClarivate Analyticsが以前からアナウンスしているとおり、WoSへの収載およびJIFの取得は恒久的なものではなく、WoSへの収載にふさわしくないと判断された場合には削除されてしまいます。

昨年よりClarivate Analyticsの体制にも変化が見られますし、これを機にジャーナルのバージョンアップを始めてみてはいかがでしょうか。特に長年WoSに収載されているジャーナルは日々の業務に追われて各所のバージョンアップが遅れてしまっているケースが散見されますのでおすすめです
杏林舎では最新の国際基準に合わせたジャーナル全体のブラッシュアップを承っています。ちょっとしたご相談でも構いませんので、是非お気軽にお問い合わせください。

ジャーナルコンサルティングの「Seekl」
電話番号:03-3918-5005(直通)
E-mail : info@kyorin.co.jp

 

参考

Supporting integrity of the scholarly record: Our commitment to curation and selectivity in the Web of Science
More than 50 journals already de-listed this year for failing to meet our quality selection criteria (https://clarivate.com/blog/supporting-integrity-of-the-scholarly-record-our-commitment-to-curation-and-selectivity-in-the-web-of-science/)

Fast-growing open-access journals stripped of coveted impact factors
(https://doi.org/10.1126/science.adi0098)

2023年12月26日 お知らせ

年末のご挨拶

2023年も残り後わずかですね。

インフルエンザの流行が目立つ冬でしたが、
気を緩めることなく、感染防止対策を徹底していきましょう。

今冬は暖冬傾向でありますが、急な寒さに気をつけて、良いお年をお迎えください。

PS. 2024年カレンダーのお知らせ
杏林舎カレンダー、皆さまのお手元に届きましたか?
卓上版の表紙は干支の「竜(辰年)」をモチーフに、来年のラッキーカラー
「赤色・金色・銀色」を取り入れた3パターンをご用意しました。
たくさん使っていただき、皆様にラッキーが舞い込みますように!

年末年始休業のご案内
休業期間:2023年12月29日(金曜日)~2024年1月4日(木曜日)
※2024年1月5日(金曜日)午前8時30分より営業を開始いたします。
※年末年始休業について、詳細はこちらをご覧ください。

2023年12月21日 お知らせ

2023年「学術出版界」の重大ニュース!

2023年も残すところ残りわずかとなりましたが、振り返ると今年も多くの重大ニュースがありました。杏林舎でも5月には3年ぶりにトロントで現地開催されたCouncil of Science Editors 2023 Annual Conference(CSE:国際科学編集者会議)へ参加し、世界中のサイエンス・エディターと情報意見交換をしてまいりました。(関連記事:「海外セミナー参加レポート」

セミナー期間中にいたるところで話題に上がっていたのがジェンダーやマイノリティに関するトピックです。論文内でのジェンダーや差別的表現に関する規定がICMJE Recommendations (ICMJE)に追記されたのは、カンファレンス後間もなくのことでした。
学術出版界において2023年で最も大きなニュースは    やはりJournal Impact Factor(JIF)の付与基準が変更されたことでしょう。(関連記事:「ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の取得にあたって」

JIFへの間口が広く開かれたことによって、今後JIFをめぐるジャーナル間の競争が益々激しくなっていくことは間違いありません。
そして忘れてはいけないのが生成AIの取り扱いに関する規定がICMJEに追加されたことです。(関連記事:「論文執筆時のAI利用は “要注意”」

生成AIの著者権や使用の制限について細かく規定されましたが、実際に不正使用の捕捉が難しいのが現実です。特にJIF基準変更と生成AIの取り扱いについては来年以降に影響が現れてくるため、引き続き注視が必要です。

今年はJIFの付与基準変更やICMJEの改定など、基準の変更が多く起きた印象的な一年でしたね。国際基準は日々アップデートされており、今後もジャーナルを取り巻く環境はめまぐるしく変化していくことが予想されます。2024年も引き続き皆様にとって有益な情報をお届けできるように精一杯務めさせていただきます。

ジャーナル運営についてお困りごとがございましたらぜひお問い合わせください。
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2023年11月30日 お知らせ

世界大学ランキング2024 ~日本勢の大躍進~

イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が2023年9月27日、THE世界大学ランキング2024 (THE World University Rankings 2024)を発表しました。

THE世界大学ランキングは2004年から毎年発表されている世界的な大学ランキングになり、様々な大学ランキングの中で最も権威がある指標だと言われています。ランキングは「教育」「研究環境」「研究の質」「産業への貢献」「国際性」の5分野における18の指標により各大学が評価されています。

2024年版では、108の国・地域の1,904校を対象に順位付けされました。トップは8年連続でオックスフォード大学。ランキングのトップテンは順位の変動はあるものの、昨年と同じ大学がランクインしています。

世界大学ランキング

  1. オックスフォード大学(イギリス)
  2. スタンフォード大学(アメリカ)
  3. マサチューセッツ大学(アメリカ)
  4. ハーバード大学(アメリカ)
  5. ケンブリッジ大学(イギリス)
  6. プリンストン大学(アメリカ)
  7. カリフォルニア工科大学(アメリカ)
  8. インペリアル・カレッジロンドン(イギリス)
  9. カリフォルニア大学バークレー校(アメリカ)
  10. イェール大学(アメリカ)

今回のランキングではアジアの大学が過去最多の737校もランクインしており、特に日本と中国の大学は大きく順位を上げています。中国は清華大学(16位→12位)と北京大学(17位→14位)が順位を上げ、200位までに前年(11校)を上回る13校がランクインしました。

日本からは119校がランクインし、国内トップは「東京大学」の29位で昨年(39位)から順位を上げ2015年以降で最高順位となっています。

日本の大学ランキング

  1. 東京大学 39位(昨年)→29位
  2. 京都大学 68位(昨年)→55位タイ
  3. 東北大学 201-250位(昨年)→130位タイ
  4. 大阪大学 251-300位(昨年)→175位タイ
  5. 東京工業大学 301-350位(昨年)→191位タイ
  6. 名古屋大学 301-350位(昨年)→201-250位
  7. 九州大学 501-600位(昨年)→301-350位
  8. 北海道大学 501-600位(昨年)→351-400位
  9. 筑波大学 501-600位(昨年)→351-400位
  10. 東京医科歯科大学 501-600位(昨年)→401-500位

今回のランキングでは評価指標に大きな改訂がありました。
従来の分野である「教育」「研究」「被引用論文」「国際性」「産業界からの収入」から「教育」「研究環境」「研究の質」「産業への貢献」「国際性」に変更になり、指標の数も13個から18個に増えました。今回行われた大幅な評価変更がアジアの大学の順位アップにつながったと考えられます。他の地域と比較すると「教育」の項目と「研究の質」の項目評価が大きく上昇しています。

日本の大学は「教育」分野の「学生に対する教員比率」で高い評価を獲得し、新指標である「産業への貢献」分野の「特許に引用された論文数」においても高く評価されました。

日本の大学については、評価指標の変更による追い風が来ているため、来年こそはトップテン入りを目指して頑張ってもらいたいです。

世界大学ランキング2024
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2024/world-ranking

2023年11月16日 お知らせ

査読の質を上げるには ~Peer Review Weekより~

今年は9月25日~29日Peer Review Weekとして学術出版業界の各種団体や企業がオンライン・イベントを主催しました。杏林舍はこれまでもこのイベントに参加しており、今年も例年同様にオンラインで参加しました。数あるセッションの中から、基礎となるPeer Reviewに関するセッションについて紹介します。

ジャーナルの編集委員の査読における重要な役割として「査読者の選出」がありますが、該当の論文にもっともふさわしい査読者とは

  1. 研究領域に知識が豊富であり、専門性が高い
  2. 公平で建設的な姿勢を持って査読が出来る
  3. 査読者としての利益相反(COI)がない
  4. 細かい内容だけではなく、全体像をつかむことが出来る
  5. 査読しているジャーナルの査読基準を理解している

この中で2)についてジャーナルは単に査読をしてもらうだけではなく、若い研究者が論文の執筆・投稿と同じくらいにキャリアを積む上で不可欠な査読としての経験が不可欠です。その中でジャーナルは研究者により多くの査読を経験してもらう事で、この様な意識を育成する機会を提供すべきで、それが結果として更なるジャーナルの質の向上につながるのではないでしょうか。

また、査読の質の統一性を維持するには、国際基準に沿った査読ガイドラインはもちろん、ジャーナルとしての査読方針や基準を設け、査読者に理解してもらえる様な形で共有される事が必要です。しかし、現実としては査読者と編集委員のコミュニケーションは査読依頼、そして査読結果の提出の時だけ、ということが殆どのケースではないでしょうか?
これらがしっかりと説明されておらず、一方的に論文だけを送るだけでは査読の質は向上しない、とのコメントがありました。

編集委員が査読における役割、そして心掛けるべきとして下記の点があげられました。
 A)査読者の多様化を目指すべき
 B)著者による特定の査読者の除外を尊重する
 C)より多くの研究者による査読への参加を促す
 D)査読者としての不適切な言動に注意する

査読の質を上げるためには、より多角的な視点や論点から査読を行うことで最善の査読を可能にし、それは査読者の多様化によって可能になる、というのが発表者の意見です。

また著者から特定の査読者の除外のリクエストがあった場合、それは尊重されるべきです。査読人数を限定せず、より多くの研究者が査読に参加することによって査読の質が上がるとして、学術出版業界として一定の基準を設けるべきであるとの提言がありました。

また、査読の過程における査読の不適切な言動がなかったか、もしあった場合には的確に対応する必要があります。

査読者の査読における役割は「研究への評価」であり、論文の体裁ではありません。時として査読者は文法のチェックや校正に多くの時間を費やしてしまいがちです、査読の本来の目的は研究そのもの評価であり、研究が基準に沿っているか、またジャーナルで出版するために発表内容の質を上げる事が出来るのか、についてフォーカスする必要があります。


査読者が査読においてフォーカスすべき点は

  • 目的
  • 結論
  • 表現
  • 文献
  • 研究結果
  • 手法

の6つに分かれますが、一般的に査読者は手法にフォーカスする傾向にあるようです。このような偏りを無くすためにも査読ガイドラインは重要であり、ジャーナルとして査読すべき点を査読者に対して査読依頼前にしっかりと理解してもらった上で、アサインすべきとの発表がありました。


査読者の確保は業界全体の課題であり、査読者探し、査読依頼の拒否、遅延、同じ査読者への集中等、どのジャーナルでも苦労している様です。しかし相対的により多くの査読者も認知を求めており(88%)、キャリア構築に役立つ様なインセンティブを希望しており(84%)、査読者教育の機会を希望しているとのことです。実際に査読に関わる研究の39%は査読に関する教育を受けた事がない、と報告がありました。

査読の質の向上には、より多くの査読者の確保、査読基準の確立とそれに向けたガイドラインの策定、そして査読者の教育の機会の提供と功労への認知等、幅広い対策が必要です。しかし、これらはハードルが高いという事も事実です。

そこで、ジャーナルとして最初に行うべき事は、ジャーナルとしての方針をしっかりと定め、少しでも査読者が迷わずに、同一の基準に沿って査読を行うためのガイドラインを設定することです。これにより、査読者が判断する上での負担の軽減につながると同時に査読の質を向上し、維持することが可能です。皆さんのジャーナルにおかれても、まずは査読ガイドラインをしっかりと定めてみてはいかがでしょうか?

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