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あんずジャーナル

2024年4月4日 お知らせ

Web of Scienceの収載誌見直しについて

昨年3月、Clarivate Analyticsは50誌以上をWeb of Science(WoS)から除外し、ジャーナル・インパクトファクター(JIF)をはく奪しました。WoS収載誌の見直しは定期的に行われていますが、この規模の削除は過去に例を見ないほど大きなものでした。

この見直しでは独自開発のAIツールによって500誌以上が収載基準を満たさないとしてリストアップされ、その中から削除対象が選ばれたようです。
削除対象の中にはScopusやPMCといった名だたるデータベースに収載されているジャーナルもありましたし、International Journal of Environmental Research and Public Healthという雑誌に至っては前年のJIFが4.614と分野でも平均以上に引用数の多いものでした。

今回大規模な見直しが行われた背景は2つあると考えています。一つは急成長を遂げているオープンアクセス誌(OA誌)の活動がJIFを実態以上に引き上げるよう働いているとみなされたことです。例えばMDPIというOA誌専門出版社は2010年に創業して以来、急成長を遂げていますが、ゲストエディターを大勢招くことによる頻繁な特集号発行が強力な推進力だと言われています。(中には1日に4つの特集号を発行したジャーナルもあるとか・・・)
今回のWoSからの除外にあたってMDPIとしても大量の特集号を出版するスタイルが問題視されたと認識しているようです。

もう一つはAIツールの登場によるチェック効率の飛躍的向上が考えられます。これまでも見直しによりWoSから除外されるジャーナルがある一方で、最新の国際的基準へのアップデートが遅れているジャーナルも収載され続けています。推測ではありますが、Clarivate Analytics側で問題は認識しつつも除外するほどではないと見なされていたジャーナルもあれば、リソースの関係で不備が見逃されていたジャーナルもあると考えられます。AIツールの登場によりチェックが効率化したことで、今後はこれまでは見逃されていた不備が見つかり、削除対象としてリストアップされる可能性が高まると推測されます。

WoSに収載されるには厳格な審査をクリアしなければならず、品質基準を満たしているジャーナルは全体の15%以下といわれています。しかしClarivate Analyticsが以前からアナウンスしているとおり、WoSへの収載およびJIFの取得は恒久的なものではなく、WoSへの収載にふさわしくないと判断された場合には削除されてしまいます。

昨年よりClarivate Analyticsの体制にも変化が見られますし、これを機にジャーナルのバージョンアップを始めてみてはいかがでしょうか。特に長年WoSに収載されているジャーナルは日々の業務に追われて各所のバージョンアップが遅れてしまっているケースが散見されますのでおすすめです
杏林舎では最新の国際基準に合わせたジャーナル全体のブラッシュアップを承っています。ちょっとしたご相談でも構いませんので、是非お気軽にお問い合わせください。

ジャーナルコンサルティングの「Seekl」
電話番号:03-3918-5005(直通)
E-mail : info@kyorin.co.jp

 

 

【参考】

Supporting integrity of the scholarly record: Our commitment to curation and selectivity in the Web of Science
More than 50 journals already de-listed this year for failing to meet our quality selection criteria (https://clarivate.com/blog/supporting-integrity-of-the-scholarly-record-our-commitment-to-curation-and-selectivity-in-the-web-of-science/)

Fast-growing open-access journals stripped of coveted impact factors
(https://doi.org/10.1126/science.adi0098)

2024年3月13日 お知らせ

ジャーナル・インパクトファクター取得で存在感を増す日本の大学発行ジャーナル

今回の記事は、日本の大学が発行しているジャーナルでESCI(Emerging Sources Citation Index)に収載されている雑誌についてのお話です。

ESCIはClarivate Analytics社の運営するデータベースWeb of Scienceの中では、新興ジャーナル向けのコレクションという位置付けにあります。新興ジャーナル向けといっても、収載には厳格な審査があり、どんなジャーナルでも収載されるというわけではありません。
しかし、2023年よりESCIへ収載されたジャーナルへもジャーナル・インパクトファクター(JIF)が付与されることにったため(参考記事:インパクトファクターが当たり前の時代に?)、今、ESCIはこれまで以上に注目を集めています。
この流れのなかで、日本の大学が発行しているESCI収載ジャーナルもJIFを持つことになりましたので、いくつかご紹介します。

日本の大学発行のESCI収載ジャーナル

福島大学発行(医学)
FUKUSHIMA JOURNAL OF MEDICAL SCIENCE
https://www.fmu.ac.jp/home/lib/F-igaku/journal/editor.html

神戸大学発行ジャーナル(会計)
JAPANESE ACCOUNTING REVIEW
https://www.rieb.kobe-u.ac.jp/tjar/editorial.html

徳島大学発行ジャーナル(医学)
JOURNAL OF MEDICAL INVESTIGATION
http://medical.med.tokushima-u.ac.jp/jmi/index.html

慶応大学発行ジャーナル(医学)
KEIO JOURNAL OF MEDICINE
http://www.kjm.keio.ac.jp/editors/

神田外語大学発行ジャーナル(教育)
STUDIES IN SELF-ACCESS LEARNING JOURNAL
https://sisaljournal.org/about/

筑波大学発行ジャーナル(数学)
TSUKUBA JOURNAL OF MATHEMATICS
https://projecteuclid.org/journals/tsukuba-journal-of-mathematics


ジャーナルサイトを見るとそれぞれ特色のある運営をされていることがうかがえます。筆者が個人的に気になったジャーナルは、神田外語大学が発行するSTUDIES IN SELF-ACCESS LEARNING JOURNALです。このジャーナルでは、自律的な言語学習(self-access language learning)を促進する学習施設やプログラム、学習メソッドに関連する研究を取り扱っています。
同学では独自にSALC(Self-Access Learning Center)という生徒の自律学習を支援する施設を運営するなど、自律学習促進への取り組みに力を入れているようです。
教員が不足するなかで、自律的な学習を促し、効率的により多くの学習効果をあげる研究は、今後ますます重要になっていきそうですね。

このように大学の特色に特化した運営をしているジャーナルが収載されていることからもわかるように、ESCIでは必ずしも引用インパクトのみにジャーナルの価値を求めない、社会的、地域的価値の高い研究を扱うジャーナルを収載する傾向が強まっています。
更に、フラッグシップコレクションであるSCIE(Science Citation Index Expanded)でも、引用インパクトばかりに重点を置かない、ジャーナルの質そのものにも注目した多角的評価に力を入れ始めています。

近年強まりつつある、JIFを初めとする評価メトリクスの誤用による偏った研究評価に反対する動きに呼応するように、今後は引用インパクトばかりを重要視しない、価値のある研究を扱う多様なジャーナルのJIF取得が増えていくと予想されます。
機会があれば、JIF以外のジャーナル評価指標についてもご紹介できればと考えています。

ジャーナル・インパクトファクターに関する相談はこちら(info@seekl.jp

2024年2月16日 お知らせ

ICMJEアップデート<2024年1月>

2024年1月に医学領域における国際基準を策定している国際医学雑誌編集者委員会のICMJE(国際統一投稿規定)のアップデートがありました。
https://www.icmje.org/news-and-editorials/icmje-recommendations_annotated_jan24.pdf


今回のアップデートは主に下記の3点です。

  • Authorship
  • ‐AI機能の利用と開示
  • ‐医学ジャーナルと炭素排出量

まずAuthorshipについては近年低中所得国で集められたデータを基にした論文で、それらの国の現地研究者を著者から除外する事案が多くみられるため、ジャーナルはその様な可能性がないか、査読の際には注意を払う必要があります。もし、これらの研究者が著者として含まれていないという疑いがもたれる場合、著者にAuthorshipの正当性を疑うべきである、とのことです。

AI機能の利用と開示については、著者が論文の執筆にAI機能を用いた場合、その旨を謝辞(Acknowledgement)内で開示する必要があり、また研究過程において利用した場合は「方法(method)」のセクションで詳細を説明する事が新たに求められています。

加えて既に2023年8月発行のS1M News2023年6月5日のあんずジャーナルでもお知らせしているように、査読にAI機能を利用は守秘義務違反にあたる可能性があります。このことから今回のアップデートでは査読規定内において査読におけるAI機能の利用について言及すべきであると記載されています。また、その際に査読者は事前にその利用について許可を得る必要が発生します。

その他のトピックとして医学ジャーナルと二酸化炭素の排出に関する項目が追加され、ジャーナルは、炭素排出実質ゼロの達成に向けてあらゆる戦略の策定に協力すべきであると記されています。また、研究助成金に関する謝辞の記載範囲や研究参加者の保護について、および文献の記載に関するアップデートが追加されました。

2024年2月2日 お知らせ

ジャーナルインパクトファクターのコントロール

以前の記事(参考記事:投稿数は簡単に増やせる?)では、投稿数を直接的に増やせる数少ない方法の一つとして、ジャーナルインパクトファクター(JIF)の取得をご紹介しました。

最近ではJIFのジャーナルへの付与基準が緩和されたこともあり(参考記事:インパクトファクターが当たり前の時代に?)JIF取得コンサルティングの問い合わせも急増しています。

この変更は引用の少ない分野や新興雑誌にとってはJIFを獲得する大きなチャンスである一方で、既にJIFをもっているジャーナルにとってはネガティブな影響をもたらす可能性があります。
これまでJIFはフラッグシップコレクションであるSCIEの収載誌にのみ付与されていましたが、現在は新興ジャーナル向けのESCI収載誌にも付与され、どちらのデータベース収載誌も同一の指標で評価されるようになりました。結果、SCIE収載誌よりもJIFの高いESCI収載誌に研究者の注目が集まるという逆転現象も一部で起きています。
競争が激化することでもともとSCIEに収載されていたジャーナルであってもJIF値の低迷、場合によってはコレクションから除外(JIFをはく奪)されてしまう可能性も以前より高くなっています。

そのため今後は先回りしてパーセンタイル(領域内順位の%)やクォータタイル(領域内順位の四分位)を上げていく施策を検討、実施することでJIFをコントロールすることの重要性が高まっていくと考えられます。なおJIFは相対的に評価するものですので、数値としてJIFが上がっていくことよりも領域内での順位や四分位が上がることの方が重要です。

JIFを取得するまでの重要なポイントは

  1. 最新の国際基準に準拠し、変更にキャッチアップする運営体制
  2. ジャーナルポリシー誌面に反映させる編集体制
    ですがJIFを維持・向上させていくにはそれにプラスして
  3. どんな論文がどんな属性の著者に引用されているのか、自誌の引用傾向を決定づける要因が何なのかを特定し、そこにマッチする施策をピンポイントに実施する
  4. 領域内の他ジャーナルの引用傾向と要因を知ることから、他誌の戦略を知り自誌の運営へ応用する

ことが必要になってきます。このような分析を行うことで初めて広報などの施策が有効なものとして設計できるようになります。

またこういった分析を用いた長期的な戦略と併せて掲載論種のコントロールなど、短期的な施策も適宜行うことも必要です。

しっかりと分析と対策をたててジャーナルの質と価値を高めていきましょう。

私たちはJIF取得コンサルティングを始め、引用分析や他誌をベンチマーキングとした分析、広報立案などJIF取得、維持・向上を強力にバックアップします。
「JIFが低迷して困っている」「JIFとりたいけど何をしていいかわからない」といったお悩みでも構いませんので、興味のある方はぜひinfo@seekl.jpまでご一報ください。

2024年1月25日 お知らせ

投稿数は簡単に増やせる?

一昨年5月公開のS1M Newsでコロナ禍とその後の国内論文投稿数についてレポートしました。(まだ読んでいない方はこちら

記事では英文誌和文誌ともにコロナ禍で大幅に投稿数が増えたものの、その後の感染症の収束に合わせるように減少し、2022年時点ではコロナ禍以前と同程度かそれ以下まで落ちていることをお伝えしました。
私たちも「コロナ禍前よりも投稿数が減ってしまっている」「投稿数の減少が止まらない」など、投稿数に関するお悩みをこの1年で特に多くご相談いただきました。

ジャーナル運営関係者の皆様が日頃から頭を悩まされていることからも分かる通り、投稿数が伸び悩む原因はジャーナルそれぞれで多岐にわたっており、「これをこうすれば投稿が増えます!」と明快にご案内できるものではありません。

「投稿者にとって投稿しやすい環境が整備されているのか?」
「投稿者が投稿したいと思わせる情報が見やすく表示されているか?」
「執筆・投稿にかける労力に見合った見返りがあるのか?」

など、投稿者から見た雑誌の姿を客観的に分析して、多角的に複数の対策を実施していかなければなりません。
投稿募集戦略というと、広報が真っ先に思い浮かぶかもしれません。SNS運用やジャーナルサイトの活用、その他外部ツールの利用など多くの手段がありますが、どれか一つをとって直接的に投稿数に大きな影響を与えるものではないため、細かくKPI(Key Performance Index)を設定した綿密なプラン設計が必要です。

そんななかで、直接的に投稿数にポジティブな影響を与え易いのが、PMCやMedlineなどのデータベースへの収載やジャーナルインパクトファクター(JIF)の取得です。JIFを持つジャーナルに論文が掲載されることは著者の実績にもつながります。JIF値の分析とコントロールを行うことで投稿数増大効果をより大きくすることができます。

PMC収載はJIF取得に比べて即効性が高く、投稿数増加効果が収載後1年内に現れることが多いように感じます。私たちがコンサルティング・サポートしているジャーナルの中には、PMC収載後翌年には、投稿数が倍に増えたジャーナルもあります。
もちろん日頃から投稿数増加のための工夫や施策を多くうってきた努力の賜物なのですが、PMC収載がきっかけになっていることは間違いありません。
もしも論文投稿数の頭打ちや現象にお悩みであるのであれば、JIF取得やPMCなどの国際的なデータベースへの収載を検討されても良いかもしれません。

データベースへのジャーナル収載に向けた準備申請には相応の労力がかかります。
データベース収載申請・JIF取得の第一歩として、ジャーナル診断で問題点を洗い出してみることをおすすめします。
ジャーナル診断はPMCやESCI(JIFが付与されるデータベース)を初めとする国際的なデータベースの審査基準にジャーナルがどの程度合致しているのか、これからどんなことをしなければならないのかなど、スタート地点の確認に最適です。

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