ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の取得にあたって

2024年6月、公益社団法人 日本医師会・日本医学会が発行する「JMA Journal (https://www.jmaj.jp/)」が、初めてのジャーナル・インパクトファクター(Journal Impact Factor ; JIF) の1.5を取得しました。ジャーナル創刊準備の段階より編集長を務められます福井次矢先生に、JIF取得までの道のりや今後の展望についてお話を伺いました。
編集長は自身の経験を活かす

Editor in Chief 福井 次矢先生(社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院 常務理事)
日本医師会様は、JMA Journalの前に「JMAJ」という英文誌を発行されておりましたが、新たにJMA Journalを創刊した経緯や目的を、最初にお聞かせいただけますか。
【福井】 私自身としては、アメリカで一般内科の診療の傍ら勉強もして公衆衛生で学位を取ったこともあり、公衆衛生と一般内科の分野での知り合いがアメリカに多くいます。その中である先生から2017年の春ごろに連絡があり、アメリカ医師会が発行する「JAMA Network Open」という雑誌の創刊の編集委員会メンバーになることになりました。立ち上げのための編集委員会ののち数回の会議を経て2018年にJAMA Network Openが創刊されました。 論文をオープンアクセスにしていたので、ものすごく忙しい編集委員会だったのですが、 2020年になって早くもJIFがつきました。最初から5.032と非常に高いものでした。
また、JAMA Network Openには世界中から論文がどんどん投稿されてきます。当初からテーマや分野を絞りすぎない感じの方針で、オンラインかつオープンなイメージで運営してきました。
私にはそういう経験がありましたので、日本でもJAMA Network Openに匹敵するような、いろいろなテーマのもの、そして海外に向かって発信できるようなものを新しくつくりたいと、ずっと思っていました。
JMA Journalはゴールド・オープンアクセスにこだわりたい
【福井】 日本からも、オンラインで、ワールドワイドな雑誌を、なんとか出したいと強く思いました。
まず頭に浮かんだのが、掲載料についてでした。日本では、きちんとしたジャーナルの掲載にはお金がかかるのは当然という考えもある一方で、それがかなりのハードルになっているのも事実でした。考えまして、しばらく掲載料をゼロでできないかという話を周囲にしました。無料だとしても、どのくらい時間がかかるかはわからないけれど、必ず日本からきちんとした論文が出せるジャーナルになる、というところはいまも確信しています。
JMA Journalのひとつの“売り”は、“掲載料ゼロ”すなわちゴールド・オープンアクセスなのです。通常、研究者は研究が終わったあとに論文を書くわけですが、研究費は研究に費やしているため論文掲載の費用は残っていないことが多いのです。その状態で投稿する場合、所属機関が捻出してくれればいいのだけれどもなかなかそうもいかず、結局自らのポケットマネーでということもあります。現実として、掲載料ゼロについては皆さん「本当にありがたい」と言ってくれています。今後ともぜひその方向を維持できるように願っています。
それで、JIF取得には6、7年かかったのですよね。
【福井】 今回JIFがついて、その点でも投稿する人にとって、新たなメリットが加わりました。いままで以上にうまく宣伝をすれば投稿数は絶対に増えていくと思うのです。
そういう状況も踏まえて、日本医師会には掲載料ゼロをできるだけ長い期間続けてほしいと伝えています。
投稿数、急上昇中!

【福井】 どのくらい増えている感じですか。
【福井】 ああ、ほんとうにすごい数になってきました。やはりJIFがつくと、皆さん、より投稿しようという気持ちになりますよね。ほんとうによかったです。
【福井】 JAMA Network Openはいま10.5になっているので、JMA Journalも上がりますよ。ほんとうにそう思います。
いろいろな分野からの論文をアクセプトして、オープンアクセスで、掲載料が無料であれば、絶対にJIFは上昇していくと思います。
間口が広い! JMA Journalが投稿先に選ばれる魅力
【福井】 いろいろな幅広い分野を網羅して掲載するということをすると、毎回のように新しい分野が次から次へと出てくるものです。現在受け付けている分野は64分野にもなります。すごい幅の広さです。
【福井】 そのとおりだと思います。
論文種類でみると、いちばん投稿が多いのはOriginal Research Articlesで、その次がImagesですね。投稿受付当初からImagesも割と多いけれど、オリジナルなものがいちばん多く投稿されているのでバランスが良く、いい傾向かなと思われます。Review Articleが3番目。ほんとうにいろいろな分野から投稿してもらえればうれしいです。
【福井】 あとは、宣伝・広報面などで杏林舍にはたくさん工夫をしていただいていますね。
【福井】 そうです。そのビデオはだいぶ視聴されていますね。
【福井】 現在の論文採択率は全体で50%ですね。
【福井】 外国からの投稿は割合的にまだまだですね。
【福井】 アジア、中東のほうからの投稿は多いようですね。これからはもっと広くぜひ欧米からも増えてほしいところです。
これからの方向性
編集事務局には、査読者がなかなかみつからないというメールを編集委員の先生からいただくことがあります。ジャーナルの分野が広いからこそ査読者がみつからないという声は、投稿を受け付けた当初からの課題です。しかし、そのような状況においても編集委員の先生方は非常にスピーディーに対応いただいており、すぐに推薦などもしていただくので非常にご尽力いただいているなという印象です。
【福井】 ほんとうにすごいなと思っていて。助かっています。
【福井】 たとえば「JAMA」や「BMJ」に匹敵するような、「臨床医学雑誌といえばJMA Journal」というように思ってもらえるような存在になってほしいです、日本発のメインのジャーナルとして。そのためには、まずは外国からの投稿を増やしたい。
掲載料というか、お金がかからないというインセンティブを維持していくことと、今回のJIF取得で、投稿が増える可能性は大きくなっています。編集委員の先生方に頑張っていただいたりもしていて、本格的に効果が出るのはこれからかと。大変だとは思うのですが、ゆくゆくは2カ月に1回ぐらいの出版の必要があるくらい、投稿数が増えてほしいですね。
【福井】 様々なOpinionがあるのは歓迎されることかと思いますが、ひとつの意見を掲載したとしても、ジャーナル自体のスタンスとして何か特定の主張をサポートするということはありません。
【福井】 JMA Journalにいろいろな意見が掲載され、議論が進むこと自体は、いいことだと思います。
【福井】 そういうジャンルでも、JMA Journalが日本の代表的な雑誌になると良いですね。
【福井】 なっていけたら、うれしいですね、ありがたいですね。
【福井】 できることは一生懸命やっていきますよ。
本日はありがとうございました。
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主な記事
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(JMA Journal 編集長インタビュー)
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