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ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の取得にあたって

S1MNEWS No.24 特集
Journal Impact Factor(JIF)の取得にあたって

2023年6月、日本大腸肛門病学会が発行する「Journal of the Anus, Rectum and Colon(JARC)」がジャーナル・インパクトファクター(Journal Impact Factor; JIF)を取得しました。今回、英文誌JARCを立ち上げた初代編集委員長である宮島 伸宜先生(現日本大腸肛門病学会理事長)と現編集委員長の石原 聡一郎先生に創刊当時の構想と今後の展望について伺いました。

 

英文誌JARCを立ち上げた初代編集委員長

宮島先生
【初代編集委員長】宮島 伸宜先生(日本大腸肛門病学会理事長、医療法人恵仁会 松島病院 院長)
JARCの創刊にあたって、ジャーナルの目的や最初の経緯をお願いします。

【宮島】まず学会の会員数を増やさないといけないという大前提があって、そうすると国際化は必須です。では英文誌はどうしているのかという話になり、 当初大腸肛門病学会には、まだ学会自身の英文誌はなく、提携のジャーナル『Diseases of the Colon & Rectum』(DCR)だけでした。DCRに年に1回サプリメントとして載せているだけ。それではいけないだろうということで、英文誌をどうしても作りたいというのが最初の経緯です。国際情報発信というのがいちばん大事なところでした。

英文誌を立ち上げたいという考えがあって、杏林舍を選んだ理由は、どういったところが決め手になったのでしょうか。

【宮島】3社ぐらいと競合だったのですが、ポイントは理事たちにとってどの会社が“いちばん楽か”ということでした。杏林舍以外は当然すべてが英語でしたので、本当に困ったときに日本語で進められるかが決め手の一つであったのは間違いないです。

編集委員を選定する際にどのような点に重点を置きましたか。

【宮島】ゼロからでしたから、内科と外科と肛門科をまんべんなく考慮して、その中で業績があり、かつ英文論文を書いている先生方をセレクションしていった感じです。

 

jarc_web
JARC Webサイト

 

編集委員も掲載論文も編集委員長が決断する

創刊当初、採択する論文の基準をどのように設定されましたか。

【宮島】採択率は、5割より高いところを目論んでいたのですが、私が編集委員長の時は3割ぐらいを設定しました。A+からC-という評価があって、どこまでを取るかは編集委員長の権限です。内容によっては書き直してもらいます。

査読者によってもいろいろな評価が出てきます。統一的な基準というのはなかなか難しかったりしますか。

【宮島】査読者が査読してきて、編集委員に行って、最終的に編集委員長に来るわけです。担当編集委員に論文を差し戻したこともありますが、それによって担当編集委員と編集委員長で評価基準の統一を図っていくということが重要です。過去にはエディターキック* が頻発していたこともありました。依頼論文で1号固めたこともありました。

掲載料を無料にできた経緯

掲載料の金額設定の経緯についてお聞かせ下さい。

【宮島】JIFのない新規ジャーナルに投稿してもらえるように、掲載料を無料にしたい想いがありました。杏林舍さんから科学研究費(科研費)申請の提案もあり、科研費を取れたおかげで掲載料無料を実現することができました。

科研費についてお聞きしますけれど、日本学術振興会と面談があったと思いますが、何か印象に残ったことはありますか。

【宮島】「DCRがあるのに、なぜわざわざ日本から英文誌を出す必要がありますか」という質問を受けたのは覚えています。「むしろ、日本の大腸肛門病学を日本から発信しないでどうするのか。日本発のデータを世界へ出すべきだ」と強く語りました。

そのほかに、創刊する際に大変だったことはありますか。

【宮島】うまくいかなかったことは、杏林舍さんのおかげであまりなかったです(笑)。すごくうまく進みました。いろいろひな形を作ってもらって、ScholarOne Manuscripts™のシミュレーションをし、投稿・査読フローがスムーズにいくか判定して…。2016年春先に理事会で決定され、2017年1月に創刊です。このスピード感と理想の実現は杏林舍さんでないとできなかったと思います。

前編集委員長としてJIFを維持していくため、発展に導くため、どのような方策があるでしょうか。

【宮島】1.4点とJIFがついたことで、論文数が増えるためのベースラインはできたかなと思います。若い人たちも含めて英文論文を書いてみようというときに、日本の大腸肛門病学会で、JIFを持っている学会誌に出そうという気になるよう、学会員の先生方にもっと伝えていくべきです。気楽には出しづらい海外のジャーナルよりも、日本のJARCに回したほうがいいと思われ始めているのかもしれませんね。いい症例、いい報告があったときに気軽に出せるようなジャーナルでありたい。なおかつ質は保っていく。そうすれば自然と被引用数は増えてJIFが上がっていくと思います。

 


JIF取得! 現編集委員長がJARCについて語る

宮島先生
【現編集委員長】石原 聡一郎先生(東京大学医学部腫瘍外科 教授)
石原先生が編集委員長に就任された際に目標として掲げられたものはありますか。

【石原】いくつかありました。宮島先生が始められて、PubMedに載って、オープンアクセスジャーナルとして維持していきたいと思いました。また当初から明確な目標としてJIFを取るというのがありましたので、どうしたら取れるか考えました。それから、今もそうですけれども年間4号と規模はまだ小さいので、発行回数を増やして発展できるようにと思っています。

初代の編集委員長から引き継がれた形になりますが、ジャーナルのレベルや採択する論文のラインで何か意識されていることはありますか。

【石原】JARCには、編集委員長になる前から論文を投稿して、掲載してもらっていましたから、大体どういった感じのものが載っているかはわかっていました。ジャーナルの趣旨が日本から大腸肛門病の情報発信を促進するというものなので、掲載論文のラインといいますと、当たり前ですが、まず科学論文としてちゃんとしているということです。内容はもちろん重要です。臨床や研究に役立つとは、つまり別の論文に引用される可能性があるということです。メッセージや新しさなどが必要ですね。そういう質が保たれていれば、いたずらに採択率を下げないで、ジャーナルのキャパシティが許す範囲で、みんなに投稿して読んでもらうということが大事だと思っています。現状、採択率は50%前後で安定しています。

JARCの採択率は50%がある程度の基準とのことですが、いい論文が増えていく中で、審査基準を少し変えようと考えられたことはありますか。

【石原】採択率というのは結果として出るものです。査読者あるいは編集委員が論文を採択するかはその人の主観が強く、だいたい5割ぐらいを取ろうとか、そういうふうにそもそも考えてはいません。読んでちゃんとした論文か、メッセージがあるのか、新しいことがあるのか、それが研究などに役立つかというところで決めていると思います。その結果が5割ぐらいになっていると。採択率というのは、そのジャーナルに送られてくる論文の全体のレベルによると思います。

 

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海外へもっとアピールしていきたい

ジャーナルの周知方法として、どういったものが効果的だったでしょうか。

【石原】大腸肛門病学会の公式英文誌ということで、日本の先生には一定の信頼度はあると思います。ただ、海外の人はJARCと言われても、山のようにあるジャーナルの中の一つとしか見てくれない、埋もれてしまう可能性が高いかなと思います。ですので、海外向けだとTrendMD** やWeb of Science Author Connect*** をPR活動として行っていて、国内向けだと会員の先生向けのメールマガジンや、学術集会でポスター展示や冊子体を無料配布しました。それから、広報活動の一環として、DCRに論文の要旨を送っています。DCRに各ジャーナルの要旨を載せるコーナーがあって、そこに載ればDCRの読者がJARCに投稿してくれるかもしれないですしね。

先生が編集委員長になってから取り組まれていることとして、JARCのサイトでのコンテンツの充実化があります。アクセス数の多い論文一覧や、JIFの値、審査期間なども掲載されていますが、サイトのコンテンツにそういうものがあるほうが引用されやすいでしょうか。

【石原】それはあると思います。JARCのサイトはすっきりしていてわかりやすいですし、これを見てくれればJARCには非常に役に立つ論文がたくさんあるということを知ってもらえるはずです。また、総説やガイドラインは引用されやすいというのはありますね。あとは、執筆する際の文献検索で見つけてもらえるような内容のものを掲載していきたい。

 

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Web of Science Author Connect*** を使用して配信されるHTMLメール

 

今後の展望、目標

今後の展望、目標についてお願いします。

【石原】現状として、ジャーナルに投稿するときはJIFが“上”のほうから順に投稿され、すごい研究をやったとして、じゃあ最初にJARCに投稿、とはならないと思うのです。やはり海外の有名なジャーナルにまず行くわけです。私は他誌で査読者賞をいただいたり、編集委員だったりもするのですが、そういうジャーナルの査読で落ちたものがJARCに回ってきているようです。一方で、半ば諦めていたような国際情報発信をJARCではできるという、受け皿的な存在ではあるかもしれません。今後は影響力をどんどん高めていく、そうするとJIFも上がっていく、 JARCを最初の投稿先として考えるようになり、さらにはもっとレベルの高い論文が集まってきて、というのが理想だと思います。肛門病学には特に力を入れているジャーナルだと思いますので、けっこう可能性はあるのと思います。また、国際情報発信の場として、日本の大腸肛門病学の国際的なステータスを上げるというのも、JARCの現実的な役割だと思っています。 オープンアクセスで学会員からの掲載料を一部取っていないことも、これを維持していきたいですね。日本全体の底上げをする中で自然とジャーナル自体のステータスが上がるのがいいと思います。


宮島先生、石原先生、この度はお忙しい中、ご協力くださいまして誠にありがとうございました。

 

*エディターキック:論文を査読者に回さず、編集委員の段階で不採択の判断をすること。

**TrendMD:ジャーナルの存在周知や、掲載論文の被引用数増加のためのサービス。TrendMDを導入している他誌の論文概要ページ上に関連論文として自誌の掲載論文へのリンクが表示される。

***Web of Science Author Connect: Web of Science Core Collectionに登録されている論文著者に向けてメールを配信することができるメールサービス。  

 

 

S1M NEWS
S1MNEWS2023年10月発行 第24号

主な記事
■ <特集レポート> ジャーナル・インパクトファクター(JIF)の取得にあたって
 (JARC誌 編集委員長インタビュー)
■Journal Impact Factor取得までのステップと維持向上のポイント
■ <S1M機能紹介> Log in Using Web of Science

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