英文誌だけじゃない! 実は和文誌も収載しているデータベースって?
ジャーナルをより多くの読者に届けるためには、ジャーナルの露出機会を増やして多くの人に知ってもらう必要があります。
そのために著名なデータベースに収載されることはとても効果的な方法です。英文誌ではPMC(旧PubMed Central=米国の国立医学図書館が提供する生物医学・生命科学系オンラインジャーナルの論文アーカイブ)が有名ですが、PMCに収載されたジャーナルの掲載論文はPubMed上で全文が公開されます。PubMedといえばライフサイエンス系文献の検索エンジンとしては世界最大級ですので、潜在的な読者層が大きく広がります。実際に杏林舎でコンサルティングを行っているジャーナルでもPMCに収載されたことがきっかけで論文の閲覧数が増え、海外からの投稿が大きく増えたという事例があります。
ではこうしたデータベースに和文誌が収載されるにはどうすればよいでしょうか?
各データベースは収載対象となるジャーナルの条件を公開していますので、まずはそちらを確認してみましょう。以下に代表的なデータベースをご紹介します。
Directory of Open Access Journals(DOAJ)
DOAJは“信用できる”オープンアクセス (OA) 誌のデータベースです。2000年代以降数えきれないほどOA誌が登場していますが、中には投稿料の搾取を目的としたジャーナル(通称ハゲタカジャーナル)もあり大きな問題となっています。DOAJは独自にOA誌を審査し、国際的な基準を満たした“信用できる”OA誌のみを収載したデータベースです。DOAJに収載されることはジャーナルが国際的基準を準拠しており、かつ信用できるOA誌であることの客観的な証明といえます。他のDBとは審査基準が異なり、きちんと準備を進めれば比較的収載されやすいので、OA誌が最初に目指すデータベースとしてもおすすめです。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:全般
・分野:全般
・発行形態:オープンアクセス
Web of Science - Emerging Sources Citation Index(ESCI)
ESCIはClarivate Analyticsが提供するWeb of Science (WoS) を構成するデータベースの一つです。2015年に登場し、小規模でも存在感を放つジャーナルや成長過程にある分野のジャーナルも収載対象としています。WoSは世界有数の学術情報データベースであり、これまで収載されるとジャーナルインパクトファクター(JIF)が付与されることから非常に人気のあるデータベースです。一方でインパクトの大きいジャーナルだけを収載していたことから、収載のハードルが最も高いデータベースの一つでした。
しかしESICの登場によって収載の間口がぐっと広がり、また2023年からはESCIの収載誌にもJIFが付与されるため、これまで以上に注目を集めています。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:全般
・分野:科学系全般
・発行形態:全般
PubMed – PMC
PMC(旧PubMed Central)は米国の国立医学図書館が提供する生物医学・生命科学系オンラインジャーナルの論文アーカイブです。PMCに収載されたジャーナルの掲載論文はPubMed上でフルテキストが一般公開されることになります。 MEDLINEに比べると審査が通りやすいといわれていますので、生物医学・生命科学系でオープンアクセス化している英文誌にお勧めです。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:英文誌のみ
・分野:生物、生命科学系
・発行形態:オープンアクセス誌のみ
PubMed – MEDLINE
MEDLINE(Medical Literature Analysis and Retrieval System Online)は米国の国立医学図書館が提供する生物医学・生命科学系の文献の書誌情報オンラインデータベースです。 2022年現在、世界80カ国以上の国で出版された5,600以上の学術誌が収載されています。主として、1950年代以降の生命科学に関する非常に広い範囲の文献をカバーしており、医学、薬学、看護学、歯学、衛生学、獣医学、生化学、分子生物学、植物生理学から現代的な生命科学のほぼ全領域を網羅しています。PMCあるいはMEDLINEに収載されたジャーナルはPubMedで検索できるようになります。PMCに比べると審査は厳しく厳選されたジャーナルだけが収載されています。多くが英文誌ですが条件を満たせば和文誌も申請が可能です。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:全般
・分野:生物、生命科学系
・発行形態:全般
Scopus
Scopusはエルゼビアが提供する世界最大級の抄録・引用文献データベースです。世界中から集められた28,000タイトル以上の逐次刊行物(査読誌・業界誌・ブックシリーズ)や303,000タイトル以上の書籍などから9,100万件以上の文献を収録しています。
ScopusはWeb of Scienceと双璧をなす巨大なデータベースですが、小規模なジャーナルでも審査が通りやすいとされています。全分野(科学・技術・医学・社会科学・人文科学)が対象であり、英文誌のみならず一定の条件を満たせば和文誌でも申請が可能です。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:全般
・分野:全般
・発行形態:全般
Engineering Village – Compendex
Compendexはエルゼビアが提供する理工学系の統合データベースであるEngineering Villageに収載されている工学分野の書誌情報データベースです。Compendexを含むEngineering Villageは世界トップクラスの工学系大学の75%以上に利用されている理工学系では世界有数のデータベースとなっています。
Compendexは工学分野では世界有数のカバー範囲をもち6,500以上のジャーナル、会議録を収録、1,500万件以上のレコードを収録しています。工学分野のジャーナルであれば英文誌のみならず一定の条件を満たした和文誌も申請が可能です。
【対象ジャーナル】
・国際基準への準拠:必須
・ジャーナル言語:全般
・分野:工学系
・発行形態:全般
上記は世界中で使われている代表的なデータベースの一覧ですが、対象ジャーナルを見ると言語を限定していないところの方が多いことがお分かりいただけるでしょうか。いずれも海外のデータベースですし収載誌は英文誌が中心ですが、実は条件を満たせば和文誌も収載される可能性があります。
これまで会員向けの雑誌が多かった和文誌ですが、徐々に会員外からの投稿を認めたり、オープンアクセス化を進めたりしているジャーナルも増えています。その様なジャーナルは特に会員外での認知度を上げるためにも代表的なデータベース収載を目指してみてはいかがでしょうか。
杏林舎では和文誌、英文誌どちらにもジャーナルコンサルティングを提供しています。 目標とするデータベースの選定から申請準備、データベースの窓口業務、データベース用のデータ作成までワンストップでご提供しています。
ジャーナルコンサルティングに興味を持たれた方はぜひ杏林舎までお問い合わせください。
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