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あんずジャーナル

2023年11月16日 お知らせ

査読の質を上げるには ~Peer Review Weekより~

今年は9月25日~29日Peer Review Weekとして学術出版業界の各種団体や企業がオンライン・イベントを主催しました。杏林舍はこれまでもこのイベントに参加しており、今年も例年同様にオンラインで参加しました。数あるセッションの中から、基礎となるPeer Reviewに関するセッションについて紹介します。

ジャーナルの編集委員の査読における重要な役割として「査読者の選出」がありますが、該当の論文にもっともふさわしい査読者とは

  1. 研究領域に知識が豊富であり、専門性が高い
  2. 公平で建設的な姿勢を持って査読が出来る
  3. 査読者としての利益相反(COI)がない
  4. 細かい内容だけではなく、全体像をつかむことが出来る
  5. 査読しているジャーナルの査読基準を理解している

この中で2)についてジャーナルは単に査読をしてもらうだけではなく、若い研究者が論文の執筆・投稿と同じくらいにキャリアを積む上で不可欠な査読としての経験が不可欠です。その中でジャーナルは研究者により多くの査読を経験してもらう事で、この様な意識を育成する機会を提供すべきで、それが結果として更なるジャーナルの質の向上につながるのではないでしょうか。

また、査読の質の統一性を維持するには、国際基準に沿った査読ガイドラインはもちろん、ジャーナルとしての査読方針や基準を設け、査読者に理解してもらえる様な形で共有される事が必要です。しかし、現実としては査読者と編集委員のコミュニケーションは査読依頼、そして査読結果の提出の時だけ、ということが殆どのケースではないでしょうか?
これらがしっかりと説明されておらず、一方的に論文だけを送るだけでは査読の質は向上しない、とのコメントがありました。

編集委員が査読における役割、そして心掛けるべきとして下記の点があげられました。
 A)査読者の多様化を目指すべき
 B)著者による特定の査読者の除外を尊重する
 C)より多くの研究者による査読への参加を促す
 D)査読者としての不適切な言動に注意する

査読の質を上げるためには、より多角的な視点や論点から査読を行うことで最善の査読を可能にし、それは査読者の多様化によって可能になる、というのが発表者の意見です。

また著者から特定の査読者の除外のリクエストがあった場合、それは尊重されるべきです。査読人数を限定せず、より多くの研究者が査読に参加することによって査読の質が上がるとして、学術出版業界として一定の基準を設けるべきであるとの提言がありました。

また、査読の過程における査読の不適切な言動がなかったか、もしあった場合には的確に対応する必要があります。

査読者の査読における役割は「研究への評価」であり、論文の体裁ではありません。時として査読者は文法のチェックや校正に多くの時間を費やしてしまいがちです、査読の本来の目的は研究そのもの評価であり、研究が基準に沿っているか、またジャーナルで出版するために発表内容の質を上げる事が出来るのか、についてフォーカスする必要があります。


査読者が査読においてフォーカスすべき点は

  • 目的
  • 結論
  • 表現
  • 文献
  • 研究結果
  • 手法

の6つに分かれますが、一般的に査読者は手法にフォーカスする傾向にあるようです。このような偏りを無くすためにも査読ガイドラインは重要であり、ジャーナルとして査読すべき点を査読者に対して査読依頼前にしっかりと理解してもらった上で、アサインすべきとの発表がありました。


査読者の確保は業界全体の課題であり、査読者探し、査読依頼の拒否、遅延、同じ査読者への集中等、どのジャーナルでも苦労している様です。しかし相対的により多くの査読者も認知を求めており(88%)、キャリア構築に役立つ様なインセンティブを希望しており(84%)、査読者教育の機会を希望しているとのことです。実際に査読に関わる研究の39%は査読に関する教育を受けた事がない、と報告がありました。

査読の質の向上には、より多くの査読者の確保、査読基準の確立とそれに向けたガイドラインの策定、そして査読者の教育の機会の提供と功労への認知等、幅広い対策が必要です。しかし、これらはハードルが高いという事も事実です。

そこで、ジャーナルとして最初に行うべき事は、ジャーナルとしての方針をしっかりと定め、少しでも査読者が迷わずに、同一の基準に沿って査読を行うためのガイドラインを設定することです。これにより、査読者が判断する上での負担の軽減につながると同時に査読の質を向上し、維持することが可能です。皆さんのジャーナルにおかれても、まずは査読ガイドラインをしっかりと定めてみてはいかがでしょうか?

See you

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