査読(Peer Review)とは何か?
学術出版界における最新の話題を配信するサイト『The Scholarly Kitchen』で、査読に関する記事が掲載されました。その名も「査読(Peer Review)とは何か?」というものです。
「いまさら何?」と思われるかもしれませんが、この記事は、『New England Journal of Medicine』等の有名ジャーナルにて役員等を歴任しているKent Andersonが、別のサイトに掲載された記事に対して意見を述べたもので「査読って時間がかかるし、意地悪な査読者にあたったら、理不尽な修正を強いられて…」という査読を一般化した、紋切り型の批判に反論しています。
査読には定義がない、ましてや査読は日々進化し続けているから「査読というものは…」なんて一口には語れない、とAndersonは言います。
そして、査読を語る時には、以下のすべての項目を考慮すべきとAndersonは主張します。
- 匿名で行うか
- 匿名なら、査読者のみか、著者・査読者双方が匿名か
- 統計学的、あるいは方法論的査読を行っているか
- 査読者はその分野におけるエキスパートか
- 目的は何か
- COIとして、どのようなものを開示するか。査読者はそれを把握しているか
- 上級エディターも査読に携わっているか
- 査読プロセスはジャーナル独自のものか、あるいは、他ジャーナルの委員会運営方針や査読方針等の影響を受けたものか
- 一つのジャーナルにおいて、二階層以上の査読判定プロセスを採用しているか
- 原稿の一部に対してのみ行われるのか、付録等を含めたすべてに対して行われるのか
- 剽窃を見つけるソフトを使用しているか
- 図表の不正をチェックしているか
- 査読の出来は上級エディターによって評価されるか
こうして見ると、査読には様々な形態があり、これらの項目の組み合わせは無数にあることに気付かされます。だから、特定のパターンの査読を取り上げて、査読全般を語るのはナンセンスという訳です。また、査読の形態によって、目的や目標も自然と変わってくるはずです。
査読には不平や不満はつきものですが、査読を一般化して「査読ってこんなもの」とあきらめたり、漠然と嘆いたりしても意味がありません。また、「査読に時間がかかるなら、結果の提出期限を短くすればいい」等々、査読フローの一部にだけ注目して小手先の対応を取っても、限られた効果しか期待できないでしょう。そんな時こそ、Andersonの意見を参考にして、自誌の査読の形態と現状を細かく洗い出し、なぜその形態を採用しているのか、そのチョイスや組み合わせが最適なのか、そして目標や目的はどこに設定するのか、を考え直してみれば、そこから、査読の向上・改善につながるアイディアが生まれるかもしれません。
Your Question for the Day - What Is “Peer Review”? Kent Anderson
http://scholarlykitchen.sspnet.org/2014/07/24/your-question-for-the-day-what-is-peer-review/
パソコン版KaLibの誕生
現在、約25学協会で、会誌・ガイドライン・学術集会抄録集などでご利用いただいております電子書籍サービスKaLibに、ご要望の多かったパソコン版が誕生しました。これでWindowsやMacでもKaLibの書籍をご覧いただけるようになりました。
そこで今回は、開発チームの担当者より“パソコン版KaLib”誕生についての話を少しさせていただきます。
当初、開発チームではパソコン版の制作には懐疑的でした。電子書籍は、手軽に携帯でき、空き時間などにさっと取り出して読めるプリント版の書籍を倣って作られている訳ですから、一般的なイメージからすると、タブレットやスマートフォンでの利用が大半であろうと考えていたからです。実際、私も通勤の合間にスマートフォンで「三浦しをん」や「有川浩」などをよく読みます。
KaLibで扱うコンテンツも、通勤時にとはいきませんが、診察の合間や休憩時間にタブレットでお読みいただくことが多いのではないかと考え、パソコン版は要望が多ければと開発を後回しにしていたのです。
ところが…。
「パソコンでは読めないのですか?」「パソコン版はいつ出ますか?」などのお問い合わせをiPadレンタルの受付やサポートメールにいただくことがありました。理由をお尋ねしたところ、タブレットを持っていない方々でもパソコンは必ず持っており、仕事の道具として使っているパソコンで、他の資料と一緒に見られればとても便利だということがわかってきました。
そこで、ご要望にお応えしなければと一念発起で作成に至ったわけですが、とにかく早く使っていただくことを目標に作成しましたので、現在はPreview版となっています。機能的には、100%ご満足いただけるというところまでは達していませんが、正式版を鋭意開発中ですので、あと少しだけお時間をいただければと思います。
リリース後の出足は好調で、既に数千人の方々にダウンロードしていただいております。よろしければ、この機会にKaLibの素晴らしい読書体験をしてみてはいかがでしょうか。
学術専門の電子書籍サービス KaLib
http://www.kalib.jp/
杏林舍のWebサイトをリニューアルしました!

2014年7月11日、杏林舍のWebサイトをリニューアルしました!
皆さま、ご覧いただけたでしょうか?
思い起こせば、前回のリニューアルは約8年前。
当時、「製品」として取り扱っていたのは主に「ScholarOne ManuscriptsTM」でした。
その後、「学術専門の電子書籍サービス KaLib」、「学術集会用演題検索システム Kcon-navi」、「会員管理システム KaMsys」などが新たに加わり、学術ジャーナル関連のサービスやソリューションの種類も増え、その範囲も広がりました。
さらに充実した杏林舍のサービスと製品を知っていただきたい。
わたしたちが学術に携わる中で得た情報を皆さまにつたえたい。
そんな想いで、Webサイトをリニューアルしました。
情報が一目で見やすい新トップページ
新しいデザインのトップページでは「可変グリッドレイアウト」を採用し、それぞれのページに合わせデザインしたパネルで、情報を見やすく整理。
同時に、全ページを「レスポンシブWebデザイン」に対応させ、PC・タブレット端末・スマートフォンなど閲覧環境に合わせたスタイルで見ていただけるようになりました。
サービス・製品情報へスムーズにアクセス
「サービス・製品」を一覧化し、メニューとして常に表示、どのページからでもアクセスできるようにしました。
はじめての方はもちろん、これまでお付き合いのある皆さまも、ぜひ各サービス・製品情報のページをご覧ください。新たにご提案できることがきっとあると思います。
また、「セミナー・イベント情報」や、この「あんずジャーナル」など、これまでのコンテンツもさらに充実させました。
これからもさまざまな情報を発信していきますので、ぜひご期待ください!
ScholarOne Manuscripts ユーザーカンファレンス2014 開催決定!
「S1Mユーザーの皆様に情報共有やコミュニケーションの場を提供したい」という思いから開催した第1回。
「より意識の高いトピックを共有したい」との思いでジャーナル編集を考察した第2回。
皆様から頂いた「今後も続けて欲しい」という声にお応えして、ScholarOne ManuscriptsTM ユーザーカンファレンス2014の開催が決定しました!
ScholarOne ManuscriptsTM ユーザーカンファレンス2014
日時:2014年9月4日(木曜日)14:00~17:30
(意見交換会 17:30~)
会場:秋葉原コンベンションホール
(東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル2F)
参加費:無料
今回のメインテーマは「研究・出版倫理」です。近年では不正が一般の方々にもニュースとして届くようになり、研究・出版の信頼を失墜する様な事態に発展したり、今年のCSE(国際科学編集者会議)で取り上げられるなど、かなり注目度の高いテーマです。
特別講演として、医学教育の第一人者である、東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センターの北村聖教授にお話しいただく予定です。
もちろん、過去2回のカンファレンスにおいて大変ご好評を頂いた、ユーザープレゼンテーション、S1Mのバージョンアップ情報や機能紹介といったセッションもご用意していますよ!
参加のお申込みは8月中旬ごろに受付を開始する予定です。
詳細は後日メールにてご案内します。
今年も皆様とお会いできることを、杏林舍一同楽しみにしています。
杏林舍 制作課のご紹介
これまでにご紹介した、工務部、デザイングループ、営業企画課に続きまして、今回は制作部制作課をご紹介いたします。
制作課はその名のとおり、「制作」=「ものづくり」の部署です。編集、デザイン、印刷、開発を除いた「ものづくり」に関する作業全般を行っている職人集団の部署です。
制作課の業務は多岐にわたりますが、その代表的なものをご紹介します。
DTP
デスクトップ・パブリッシングの略で、活版印刷の時代から、写植、電算写植を経て至った、現代の印刷物制作において、多くの会社で基本となっている作業工程です。お客様からいただいた元データを、コンピューター上で印刷物のデータに組み上げ(組版)、印刷工程に渡すまでがDTPチームの仕事です。
XMLワークフロー
DTPをより現代風にアレンジした、半自動的なワークフローです。お客様からいただいたデータを、いきなり人間の手によるDTPオペレーションで組版するのではなく、まずXML形式に格納してから、DTPエンジンを組み込んだシステムで自動処理をする、という手順で組版作業を行っています。データを最初から最後までXML形式で保持しているため、通常のDTPフローと比較すると、格段にデータの汎用性・応用性が高いフローと言えます。「マルチメディア展開をしたい」「将来の拡張性を見据えて保険をかけておきたい」。そんなご要望にお応えできる、最適なワークフローです。
DBP
データベース・パブリッシングの略です。莫大なデータを効率よく印刷物に組み上げるために、DTPやXMLワークフローのノウハウに、データベース処理のIT技術を組み合わせた、高難度な制作作業です。データベースを元に作業を行うため、印刷物の制作が効率的になるというだけではなく、XMLワークフローと同じように、データの汎用性が高いということも、大きな利点と言えます。
電子書籍
電子書籍用のデータ制作を行っています。電子書籍元年と叫ばれた2010年以降、いち早く電子書籍制作業務に参入した制作課では、今日までに数十誌、数百冊ものEpub形式の電子書籍を作り上げ、主に杏林舍の学術専門電子書籍プラットフォームであるKaLibに出版し続けてきました。これまでに培ってきた、電子書籍制作に関するノウハウには自信があります。
オンラインジャーナル作成
オンラインジャーナル用のデータ制作を行っています。お客様独自の公開サイト向けのHTML制作から、J-StageやPMCのような、公的なプラットフォームへの登載用のデータ制作、さらには登載作業の代行まで、幅広くお手伝いしています。近年、多くの公的なプラットフォームでは、登載用データの形式としてXMLが主流になってきていますが、10年以上に渡ってXMLワークフローを行ってきた制作課には、XMLに関するノウハウが蓄積されており、対応も万全です。
校正
すべての制作作業を影で支えているのが、杏林舍の校正グループです。特に得意としている学術誌の校正力には、内外から絶大な信頼を寄せられています。学術誌というニッチな出版分野における、制作上の注意点を知り尽くしている校正グループは、通常の校正作業を正確にこなすことはもちろん、長年の経験から来る「気づき」をプラスαで疑問出しすることで、制作物の品質を一段上に押し上げています。
その他、実はなんでもお引き受けしているのが、制作課でもあります。「データベースを整形してほしい」「簡単なスクリプトを作ってほしい」「テキストデータを書き出してほしい」「画像処理をしてほしい」「PDFを処理して欲しい」…etc。およそ「ものづくり」と言える範疇の仕事であれば、こういった小さなご要望にも対応しています。弊社営業に是非ご相談ください。
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